「山の相談所」の看板を設置しました 

いよいよ秋本番ですね!

奥多摩に登山者が増える季節です。
当小屋の小屋泊も2名だけですが定員を増やしましたし、
11月はとくにたくさんのお客様を期待しています!

そうするとやはり遭難一歩手前の方も増えてきてしまうのが必定。
遭難一歩手前が本当の遭難につながらないよう未然に防ぎたい、というのはずっとこの小屋の願いであり役割ですが、
最近こんな看板を小屋の入り口に設置しました。

この看板の役割は二つです。
一つ目は、登山初心者の方が小屋番に声をかけやすくなるように。

これまでの出来事を思い返すと、初心者の方ほど山小屋に寄るのを躊躇して事態を悪化させてしまう傾向があるようなので、
じゃあ立ち寄りやすいように小屋側からアピールしてみよう、
というのが一つ目の狙いです。

二つ目は、このブログを読んでくださっている方々が
登山道で「おや?大丈夫かな?」という人に会った時に、声かけしやすくなるといいなと思っての設置です。

当小屋のTwitterやブログでは連休前などによく、
「軽装の方やバテている人には、どこまでいくんですか?と声をかけてあげてほしい」
と呼びかけています。

というのも、
入門書も読まない
ネット検索もしない
地図もなく、山中の道標や距離表示も見ない
という方が少数ですが一定数いるからです。
そういう方に情報を提供できるのはすれ違ったときに「大丈夫かな?」と心配してあげられる人だけです。

そして実際、心ある皆さまのご協力で、鴨沢ルートではこのような声かけ活動が定着しつつあります。
説得して無謀さを自覚してもらい、行動を変えてもらって、事なきを得た実例は枚挙に暇がありません。
こうしたご協力は小屋にとっても本当にありがたいことです。
鴨沢ルートは初心者さんもいますが、中堅さんもベテランさんも揃っているという点が非常に恵まれた良いルートだなぁと思います。

ですが、声かけってなかなか難しいよ〜というご意見も。
たしかに今の世の中、とくに下界の感覚では知らない人に声をかけるのはかなりハードルが高いと思います。

そこでこの看板を思い出してほしいのです。
例えば
「どこまで行くの?雲取山頂、日帰り?この時間からじゃ危険だからやめなさい、今すぐ降りなさい」
とまでは言いにくくても
「日帰り?ライト持ってる?無いなら『山の相談所』に寄ったらいいよ、七ツ石小屋だよ」
という具合に、パスなら投げていただきやすいのではないかと。

実は二か月以上前のことになりますが、
若い男性一名が雲取山日帰りのつもりで入山、ライトが無く日没後に行動不能になり、警察に救助要請という事例がありました。
彼はなんと14:00に鴨沢から登りはじめたとのこと。
地図はアプリも紙も無し、雨具も防寒具も無し。
服装は半袖半ズボンに小さいリュック、古いスニーカー。

この日は下山者もたくさんいたので
彼とすれ違って「おや?この時間に登り?」と思った方もいたと思うのですが、誰かからの何らかの声かけがあったのかなかったのかは分かりません。
彼は七ツ石小屋を通らない下の巻道を行って、スマホの充電がギリギリになるまで突き進んでしまいました。
誰かが「トイレと水があるから七ツ石小屋に寄ったら」とでも言って、それで彼が寄ってくれていたら警察への救助要請には至らなかったと思います。
声かけをしてくれる方がまだ足りない、呼びかけがまだまだ足りない、と痛感しました。
結局20:00に警察から当小屋に連絡があり、小屋番が捜しにいって五十人平にいた彼を発見、小屋に連れてきて宿泊させ、翌日自力下山。
夏だったので低体温症にもならず良かったですが…

これからの季節は、知識・装備・体力が不足していると即、命に関わります。

これから雲取山に来られる方は、どうぞ少しだけこのブログのことと「山の相談所」の看板をお気に留めていただけたら幸いです。
そして「どこまで行くんですか」の声かけを、一人でも多くの方にご協力お願いいたします。
看板一つは小さなことですが、ちょっとでもお役に立てて山岳遭難件数が減れば幸いです。

2022/10/19 雲取山頂付近での降雪。山岳ガイド 山田哲哉さん撮影