冬の愉しみ(静寂編)
丸々2ヶ月ぶりのブログ更新となってしまいました。
楽しみにしてくださっている方には申し訳ありませんでした。
一月は行ってしまう、二月は逃げてしまう、という通り
なんだかあっという間でした。
2017年は怒濤のような年でしたが
七ツ石小屋の周りでは死亡事故はなく、新しい年を平穏無事に迎えられ
ほんとうに感謝しております。
いつも当小屋を応援してくださる方々、
危うい登山者に声かけをしてくださる方々のおかげと思っております。
ありがとうございます。
さて、いま奥多摩はとても静かです。
1月22日と2月2日に積雪した以外は降ってもあまり積もりませんでした。
また、1月25日には強烈な寒波がやってきて
小屋番Tの経験した四度の冬の中でも最低の-19℃を記録しました。
そうなると登山者の方もあまりいらっしゃらず
丸一日、小屋の前を誰も通らないということも(稀ですが)あります。
2017年の喧騒が嘘のようです。
こんな時、小屋番は何をしているのかというと…
小屋番Tの敬愛する高田渡さんの歌に「火吹竹」というのがありますが
浸りたい気分はそんな感じです。
(夜は寝ていますけど)
山がほんとうに静かなので、人間もただただ静かに静かにしていたい。
テンやヒガラたちが寒いのおかまいなしに元気にしている気配を感じながら
火鉢を焚いたり、雪が降れば結晶でも見つめたりして、ボーッとしていたい……
ですが現実は、やっぱりいろいろとやることに追われているのでした。
湧水地から小屋に引いている水のパイプが凍るので、
流し台は使えず水汲みに行かなくてはいけないし
(とはいえ徒歩3分上に枯れない湧水があるというのは本当にありがたいですが)。
トイレの屋根に付いているソーラーパネルに雪が積もれば
ハシゴをかけて足場もない屋根で危険な雪降ろしをしなくてはいけないし。
洗濯出来る日が限られるので、
持ち降ろして下界のコインランドリーに行かなくてはいけないし。
「生活面でのやること」が少しだけ大変になるのが
小屋番にとっての冬の一つの「季節感」となっています。
少し脱線しますが、干しても凍ったり生乾きになる洗濯物に対抗すべく、
炭火アイロンを使い始めました。
見た目はかわいいですが、ものすごく重いです。中に豆炭を入れて使います。
ここでの私物の洗濯は、小さい物に限定し、お湯で手洗いするだけが基本です。
それでも、とくに冬はなかなか大変なのです。
朝、「今日は気温がゆるんで水をパイプに通せるかな?贅沢に使えるかな?」
ということを天気図と温度計と雲行きを見て考えます。
湧水地にパイプをつなぎに行って、
洗濯物を優先度で選別しながら気温が上がるのを待って、やっと洗濯!です。
待っていても結局水が通らず(どこかで凍結していて)水汲みが必要になったり、
昼を過ぎて気温がストンと下がって、無念、洗濯中止ということもあります。
なので、洗濯の仕上げに生乾きをアイロンするのは
そこまで行きつけたという満足感で非常に幸せなひとときです。
下界ではアイロンがけは面倒でキライだったのに。
面倒さが一定量を超えると楽しくなってくるのは登山と一緒かもしれません(笑)。
話は戻って、いま忙しいことの理由はもう一つあります。
四月からこの小屋をもっと良い小屋にするため鋭意準備中なのです。
詳しいことはまた後にお知らせとなりますが、
みなさんに喜んでいただけるお知らせができるようがんばっております。