小屋周辺のゴミについて考える
今年もバタバタしている間に……
ツツジも盛りをすぎ、梅雨本番。
GWの賑わいが嘘のように、しっとり静かな季節になりました。
そんな6月某日、突然ですが
宿泊者の方々とスタッフ2名の総勢8名で
「七ツ石小屋下の斜面ちょこっとゴミ拾い30分一本勝負!」
をやってみました。
このメンバーは、
先日、奥多摩町のトイレ清掃のプロチームOPTさんと一緒に
ゴミ拾いボランティアをした方たちと、
事情を聞いて駆けつけた常連さんで、
皆さん腕に覚えあり。
前日から和気藹々、チームワークもバッチリ。
8人で30分やってこんなに集まりました。
それぞれ土嚢袋で
ガラス 8袋
金属 4袋
陶器 1袋
その他 不燃ゴミ 2袋
おかげ様で、周辺の「見た目」はとてもきれいになりました。
最近のゴミはほとんど無く、ほぼ全てが昔の瓶や缶です。
実は七ツ石小屋の下の斜面にはこのようなゴミが沢山埋まっています。
「ゴミは埋める」がマナーだった時代の置き土産です。
そのこと自体は、山をよく知る方であれば
他の場所でもよくあることだと仰ると思いますが
ここでの問題に限定し、ずっとここのゴミを拾いつつ観察してきた小屋番の考えを書きたいと思います。
1、ゴミのある斜面の状態
小屋下の斜面は、雨や雪のたびに土が流れてしまいます。
流れた土が登山道を埋めてしまうので、昨年、土留が作られました。登山道への影響は少なくなりましたが、土が流れること自体は相変わらずです。
続いて鹿柵も設置されました。
柵内では一年で植物が繁茂するようになりました。
柵外では鹿の食害が続いています。
鹿に植生を食べられて土が剥き出しになっている部分では
雨のたびに土が流れ、下から昔のゴミが浮き出てきます。
せっかく今回きれいにしていただきましたが、実は時間が経つとまた出てきます。
拾っても拾ってもキリがありません。
もしかして鹿のせいだけではなく、ゴミが埋まっていることも植物が生えない一因なのかもしれません。悪循環です。
でも、もしも埋まっているゴミを一つ残らず取り去ろうとしたら植生を一度全てはぎ取り、大きく土をえぐることになります。
斜面崩壊の可能性もあるでしょう。
2、拾う人と登山者に危険が及ぶ可能性
斜面なので当然危険です。
誰にでもお願いできるような作業ではありません。
また小屋の西側の谷も土が剥き出しになっており、ゴミが多いのですが、こちらは危険すぎて手がつけられません。
拾う人はロープで確保できたとしても下の巻道に落石が起こる可能性があります。
作業をするなら下の巻道を通行止めにするべきですが
もちろんそんな権限は小屋にはありません。
3、ゴミの処理の問題
現状では人力で運び下ろすしか方法がないのですが、
とにかく沢山なのでとても一度では無理です。
スタッフが少しずつ運んでいるのですが、とくに割れたガラスは運びづらく、小屋に長期間保管することになってしまっています。
将来的には水道局のモノレールの使用許可を取ってゴミ下ろしをできればなぁ…とは考えていますが。
以上のことを踏まえて、今回のゴミ拾いも
・なるべく掘らないで取れるものだけ拾う。
・範囲を決め、それ以外では行わない。
・30分で終了する。
というルールで行いました。
せっかくの精鋭が集まったのに本腰入れてガッツリやらないなんてもったいない話ですが
この程度の作業を繰り返していくしかない、というのが現状です。
ただ今回は、このような状況を参加者の皆さんに知ってほしいというのも大きな目的だったので、それは達成できたと思います。
そしてこのブログをお読みの皆さんにもぜひ知っていただきたいです。
昔のゴミで小屋周辺の美観が損なわれている、
そのことに胸を痛め少しでも良くしようと行動してくれる人がいる、
ただ残念ながらボランティアの力だけでは、一時的な改善はできても根本的な解決はできない、ということを。
以下は私見ですが、もし解決法を提案するならば
ここでのゴミの撤去は緑化とセットで行うしかないのではないかと思っています。
ゴミをある程度掘り出した後、鹿柵や植生ネットなどを設置して、植物を生やし流れない新しい土壌を作っていくということです。
単なるゴミ拾いではなくこの周辺の土地の環境改善といったことになります。
もちろんこのやり方が正しいのか、検討にも時間がかかるでしょうし、許可も必要、予算もかかりますが、当局には考えていただきたいところです。
最後に今回のゴミ拾いに参加してくださった皆さん、
たった30分ですが汗をかくほどがんばってくださいました。
こういうこと楽しくやれる人というのが本当の幸せな人かな、なんて思いました。
本当にありがとうございました!