これから雲取山に初めて登る方へ

トンボが飛び交い、アブや羽虫が姿を消し、
空は高く涼しい風の吹く季節がやって来ました。

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標高×西暦イヤーで、2017年に入ってからずっと賑やかな雲取山ですが
「なんとか2017年じゅうに雲取山に登りたい!」という方も
これから駆け込みでたくさんいらっしゃると思われます。

でもとくに今年に入ってから、ここ鴨沢ルート上には
普段登山をしない方が増えていると感じます。

そういう方たちが山に入る前に、ネット検索でココを見つけてくれたら、と
当サイトに新しいページを設けました。
雲取山登山の注意点(秋、無雪期)
今後、季節ごとに更新(+改善)していきたいと思います。

正直に言えば、基本的に登山は自己判断、自己責任の世界。
情報収集やそこからの判断が自分でできない人は、登山には向いていません。
なので山小屋のサイトとして、ここまでやる必要あるのかな、お節介かな〜
と迷いましたが、それでもこのページを新設しました。

今回のブログは、上記ページの続きです。上記ページをまず読んで、
まだ足りない、おかわり!という方へ。
食欲の秋、お節介の大盛り二倍バージョンです。

え〜、上記ページに載せた「登山計画例」は、とても大まかですが
コースタイム一時間ごと約10分の休憩時間をプラスしています。
小屋でのんびり休憩、山頂でゆっくり記念撮影、という時間は含んでいません。
登山を普段しない方にとっては、少し厳しめの時間設定かもしれません。

実際の計画は、あくまでも自分のペースに合わせて自分で立ててください。

「自分のペース」って何かって?

自分のペースを知るためには、
どこか他の日帰りできる低山を歩いてみて、時間を計りメモをとり、
その山のコースタイムとの比を計算してください。
例えば奥多摩であれば三頭山、日の出山、御岳山など。
鴨沢から七ツ石山を目標にした日帰りでも良いでしょう。

こうした低山ハイクを2〜3回行えば、例えば
「コースタイム5時間の山を、6時間で歩けた、休憩時間含めると7.5時間だ」
とか
「登りはコースタイムの1.2倍だけど下りは1.5倍かかる、私は下りが苦手なのか」
とかいうことが見えてくるでしょう。

そこまでしなきゃいけないのかって?
雲取山は1400m以上の標高差を登らなければなりません。
登山を普段しない方がいきなり登る山ではありませんよ。

さて自分のペースが分かったら、やっと計画が立てられます。

休憩をいれた全行動時間(入山から下山まで)が
コースタイムの1〜1.2倍ほどであれば一泊二日行程で計画を。

コースタイムの1.5〜2倍であれば、雲取山へは二泊三日行程をお勧めします。

もし、2倍よりもっとかかるのであれば
残念ですが今年は雲取山に登るのはあきらめましょう。
「2017」へのこだわりは捨てましょう。命の方が大事です。
来年の春の雪解け以降にもっと体力をつけてから挑戦してください。

登山が久しぶりという方も当てはまります。
「久しぶりでいきなり雲取山」はやめて、他の山で準備をしてきてください。
昔とった杵柄のペースどおりには体は動きません。

コースタイムと自分のペースを知るのが何故重要なのか、事例を挙げます。
今年1月、コースタイムの二倍以上の八時間かかって
午後四時に七ツ石小屋にたどり着いた方がいました。
計画では雲取山荘を目指していたそうです。
コースタイムとその方のペースから考えれば
計画段階で明らかに、1日で雲取山荘着は不可能と分かるはず。
その方には
「もしこの小屋にもたどり着けず野宿してたら凍死してましたよ」と言い、
翌日まっすぐ下山していただきました。

その他、多くの遭難一歩手前の事例を見てきました。
その多くが、コースタイムと自分のペースを知っていれば防げたケースです。

登山は人生を豊かにしますが、簡単に人命を奪っていくものでもあります。
私たち小屋番は、多くの方が登山を楽しんでくれればもちろん嬉しいのですが、
それより以前に
「山はレジャー施設ではない、誰でもかれでも来ていい場所ではない」
と思っています。
あなたが登山初心者ならば、自分が雲取山に挑戦する資格があるかどうか、
ちゃんと試してから来てください。

さあ、これ以上はない、おひつは空っぽというくらい、お節介を書きました。
これで「2017年×2017m」の虜になった初心者が怪我・遭難・死亡…といったケースが
一件でも減らせれば幸いです。

どうかこの思いが、必要な方に届きますように。

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