慣れから生じる三大禁句

12月に入り第二週の週末を迎えましたが、やはり例年になく登山者が多いです。
冬はそれなりの緊張感をもって入山するべきなのですが
昨今の雲取山は「2017年中に2017mの山へ!なんとか!駆け込みで!」
という「ブーム」になってしまっています。

登山経験がなく、これから2017年内の雲取山登山を考えていて、
このサイトにたどり着いた方、いらっしゃいますか〜?
トップページにも書いてありますが、
今は条件の厳しい季節です。必携の装備も多くあります。
初心者、高齢者、体力のない方、お子様連れの方には
この時期の入山はおすすめしません。
こちらのページを読んで、
春になったら低山から経験を積んで、いつか雲取山に挑戦してください。

さて今回は、「全くの初心者は山に来ない季節」という前提で
ちょっと山に慣れたころにありがちな三大禁句を
小屋番夫婦会議で決議しましたので発表します。
この禁句を口にするような状況になってはいけません!

その1「ヘッドライトあるから大丈夫です」
大丈夫じゃなーーーい!
転倒・滑落・道迷いの可能性、熊や猪との遭遇の可能性が上がります。
暗ければ救助のヘリコプターは飛べませんよ。
ヘッドライトを使ったらその山行は「負け戦」です。
極力使わないで済む計画で行動しましょう。
計画より遅れたら、日没時間を考え、引き返すか宿泊地を変更しましょう。

その2「こういう人見ませんでしたか」
はぐれちゃダメーーー!!
パーティで行動しているなら一緒に行動しましょう。
体力のない人にペースを合わせましょう。
「先に行っていいよって言われたから」とよく聞くのですが
「先に行っていいよ」も禁句です。
「体力のない人、または負傷・体調不良者にペースを合わせる、
その人の荷物を持つ、力を貸す、最後まで一緒に下山する」
という合意があらかじめ取れていないなら、山に一緒に来るべきではありません。
「一本道だから大丈夫だと思った」というのもよく聞きますが、地図をよく見て!
鴨沢ルートは七ツ石小屋周辺で急に分岐が多くなり、はぐれ事件が多発します。
しかもそういう方にかぎって地図を持ってないことが多いです。
また、山中でケータイは基本的に通じないと思ってください。
昔よりずいぶん通じるようになったとはいえ、
電波が不安定なところを二者が移動しているのですから。

その3「行けるところまで行きます」
無計画すぎーーー!!!
これは男性、高齢、単独行の方に多いです。
遭難例で多く見られるパターンとぴったり一致します。
若い頃の経験がある方が、準備も下調べもそこそこに、何十年ぶりの登山にいらして
「初めは日帰りしようと思ったら、どうもダメだから雲取山荘に行こうと思って。
でも奥多摩小屋か、ここ(七ツ石小屋)にしようかなぁ」。
あのさお父さん、「ぶらり途中下車の旅」じゃないんだからね……。
仕舞いには「どうせ年金生活だからいつ帰ったって構わない」。
本人がそういう姿勢だから捜索の初動が遅くなるんだよね……。
計画した宿泊地に着けずに途中の小屋に変更すること自体は悪くありません。
無理して進むより的確な判断と言えます。
ですが、このケースは計画時点で間違い、というより単なる無計画。
「今回は日帰り。◯時までに◯◯に着けなかったら引き返す」
「今回は一泊二日。◇◇小屋に予約。
◯時までに◯◯に着けなかったら◯◯小屋泊に変更」
という事くらいは決めて、登山届に書いて入山しましょう。

これからやっぱり心配なのは遭難、それも生死に関わる遭難です。
気温が低い。それだけで人間は死ぬ生き物です。
山中で何らかのアクシデントにより行動不能、助けも呼べず、
日帰り装備・小屋泊装備だけでビバーク装備を持ってなかったとしたら。
今の季節は一晩生きているのも難しいでしょう。

ですから確実に小屋にたどり着ける、確実に無事に下山できる、
ということを最重要と考えてください。

去年のブログにも書きましたが繰り返しますよ。
2017年というのは西暦。2017mというのはメートル法。
両者を関連付けて嬉しがっているのは人間だけ。
山の自然にはそんなこと関係ありません。
ちょっと油断した人間には容赦なく襲いかかって命を奪っていきます。

小屋番の私たちも気持ちを引き締めます。
どうぞ、年末まで大きな事故がなく、良い年明けを迎えられますように。
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