雲取山 日帰りピストン考(前編)

ひどい暑さの夏はどこへやら、すっかりどっぷり秋ですね。

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登りやすい良い季節になったのですが
この9月、10月に鴨沢ルートで三件の滑落事故が起こってしまいました。
しかもそのうち一件は死亡事故となってしまいました。
まさかという地点での事故、ご遺族のご心痛はいかばかりかと思います。
ご冥福をお祈りいたします。

今回の三件には
・雲取山を日帰りピストンしようとした
・滑落発生場所が非常に近い
という共通点がありました。
振り返ってみたいと思います。

9月8日
19:00頃、三人パーティのうちの一人、40台男性が約30m滑落。
小袖登山口まであと20分くらいの場所。
肋骨を折るなどの重症。

10月9日
18:00頃、二人パーティのうちの一人、60台男性が約80m滑落。
小袖登山口まであと10分くらいの場所。
首の骨を折るなどの重症。
病院に運ばれ数日後に外傷性脳梗塞のため死亡。

10月28日
15:30頃、単独行の60台男性が滑落。
小袖登山口まであと10分くらいの場所。
鼻の骨を折るなどの重症。

正直に言って、雲取山に続くさまざまなルート上において
滑落事故は決して珍しくありません。
死亡事故になってしまった例も今までに何件かあります。
でも鴨沢ルートのほぼ同じ場所で三件立て続けに起こったのは驚きです。
それだけ雲取山日帰りピストンをする方が(とくに年配の方が)
多くなってきているのでしょう。

これから11月上旬の雲取山は
一年のうちGWに続いて二番目に登山者の方が多い時期ですが、
これ以上同じような事故が続かないように、
ここで、前後編に分けてじっくり考えてみたいと思います。
これから「雲取山 日帰りピストン(鴨沢ルート)」を目指す方が
無事故で下山するには何が必要なのでしょうか。

まずは大前提として
・「コースタイム」という言葉を理解していること
・コースタイムの書かれた雲取山の地図が手元にあること
・自分はコースタイムとの比でどのくらいのペースで歩けるか知っていること
が絶対に必要です。

ここまでの条件はOKという方、
では、例えば11月1日の日の出、日没時間を調べてみてください。
その上でコースタイムとにらめっこしてみてください。
どうですか、行けそうですか?
(ご自分で考えてみてほしいので具体的な数字はここでは書きません)
おそらく経験者の方ほど、
「こりゃこの季節は厳しいぞ」という想像ができると思います。

そしてもし行くならば
・登頂できなくても引き返せる判断力があること
・パーティの場合は引き返しの条件を予め共通認識しておくこと
が、とても重要だと想像できるでしょう。
またその判断のために
・雲取山に一泊二日で登った経験があること
が大きな助けとなるであろうことも。

ちなみに、これを書いている小屋番T自身は、
休憩を入れてコースタイムくらいの歩行ペースです。
もし普通の登山者だったとしても、
今からの季節の雲取山日帰りは時間がギリギリすぎるので絶対にやりません。
日が長い季節なら不可能ではありませんが
強制されない限りやらないだろうなぁ、つまんなそうだから。という感じ。
夫の小屋番T氏はコースタイムの50%くらいで歩けるのですが、
「あなただったら雲取日帰りやる?」と聞いてみたら
「疲れるからやだ」とのことです(笑)。

だから、そもそもやらなくっていいんですよ、日帰りなんて。
途中に小屋があるんですから、ゆっくりしていきましょうよ。
少し重くても、美味しいものと美味しいお酒を持ってきて
日が暮れて日が昇る美しさを山の中で楽しみませんか。

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とはいえ、ここでどんなに書いても
この記事を読まない層の方こそが雲取山日帰りピストンに挑戦しに来ます。
例えば高尾山しか経験のない、小学生を連れた親子とか、
登山全く初めての、スニーカーにジーパンの方とかが、
11月3日(土)や11月10日(土)にきっとたくさんいらっしゃいます。
そういう方を見かけたら、是非
「どこまで登るの?」「今日はどこに泊まるの?」と
声をかけてあげてください。

もう日も短く、気温も低いです。
日帰りの方が無理な計画でいらして、
滑落はしなかったとしても日没、行動不能になり
装備も足りない中でビバークとなると、凍死の可能性も出てきます。

ご自分で声をかけづらかったら七ツ石小屋の小屋番に
「こんな感じの人を追い抜いて来たんだけど…」と
教えてくださるだけでも、とても助かります。
これ以上悲しい事故が起きないように、
辛い思いをする方が増えないように、
皆さんのご協力をお願いいたします。

さて、ここまで読んで
「私は雲取山日帰り、行けそうだからチャレンジしてみたい!」
という方のために、後編に続きます。