雲取山 日帰りピストン考(後編)
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さあ、この前編を読んで、
「私は雲取山日帰りできそう!」と思った方へ。
後編では実際の計画の立て方を検討してみます。
きっとサクッと手早く知りたいのは
「何時に出発すれば大丈夫?」ということだと思いますが
(電話で小屋に聞いてくる方もいます)、
それを人に聞かなきゃわからない、自分で算出できないのであれば
雲取山日帰りはやめておきましょうね。
前編の繰り返しになりますが、
・「コースタイム」という言葉を理解している
・コースタイムの書かれた雲取山の地図が手元にある
・自分はコースタイムとの比でどのくらいのペースで歩けるか知っている
のは大前提。次に
・登頂できなくても引き返せる判断力がある
・パーティの場合は引き返しの条件を予め共通認識しておく
ことが必要。また、引き返し判断のために
・雲取山に一泊二日で登った経験がある
ことが重要です。
うーん、繰り返して読むとこの「判断力」の有無って、抽象的ですよね。
では登山計画時の鉄則を思い出しましょう。
『日没までに絶対下山する計画を立てる』
『下山すべき時刻から逆算する』
それもギリギリではなく必ず余裕を持って計算します。
具体的には
「乗りたい帰りのバスの30分前」
または
「日没の30分前」
のいずれかのうち、「早い方」を下山時刻として設定しましょう。
(18:38のバスだから18:00着でオッケーねと思った方、
もうこの季節は日没時間を優先させないとダメですよ)
そこから地図上のコースタイムと自分のペースを考慮して逆算し、
「雲取山頂から◯時には絶対に下山開始」ということを決めます。
そこからまた逆算して
村営駐車場または鴨沢バス停の出発時刻を決めます。そこから自宅を出る時間を決めます。
ここでお約束その1。
下山開始時刻は絶対厳守です。
その時刻に山頂に着いていなかったとしても、
そこがどこであれ、引き返しを開始しましょう。
お約束その2。
もし出発時刻が早く、自宅から行くと間に合わないなら
丹波山村や奥多摩町の民宿などに前泊しましょう。
お約束その3。
もし前泊をして日の出30分前から行動し始めたとして、
それでも日没30分前までに下山できない計算になるならば、
季節が悪いです。もっと日の長い季節に計画しましょう。
もしくは、あなたのペースが遅いです。
雲取山は、日帰りは諦めて一泊二日にするか、
ペースを上げるべく鍛え直してからにしましょう。
これらを守って計画するだけで、多くの遭難事故が防げるのではないかと思います。
でも、これを読んでも、それでもどうしてか人間の認識はあやふやで、
自分に都合のいいようにねじ曲げて考えてしまいがちなのです。
「あとちょっとで山頂だから行ってしまおう、下りで急げばいい」
「始発で家を出て頑張ってこの時間なんだから仕方ないじゃないか」
「日没したってヘッドライトがあれば大丈夫」
という言い訳の積み重ねで事故は起こるのです。
そういう言い訳が頭に浮かんでしまった時は
七ツ石小屋のコワーイ小屋番の顔を思い浮かべて(または想像して)
「 雲 取 山 日 帰 り を な め る な !! 」
とセルフツッコミをしてくださいね。
最後に、参考になるお手本を紹介しましょう!
七ツ石小屋によく立ち寄ってくださる方で、
雲取山に毎週一回、8年間欠かさず登って
先日400回目の登頂をされた方がいらっしゃいます。
その方の鴨沢ルートの場合のタイムスケジュールです。
実際の10月22日、404回目の日のメモを写真に撮らせていただきました。
書き起こすとこうなります。
4:50 村営駐車場 出発
5:55 水場
7:00 七ツ石小屋、休憩 8:00出発
9:05 雲取山頂、休憩、山頂避難小屋とトイレの清掃の後10:50出
12:00 七ツ石小屋下
12:40 水場
13:30 村営駐車場 着
まず出発が早いです。
この方は青梅在住で車利用と、アクセスが好条件なこともありますが
いつも日の出の約1時間前から歩き出すそうです。
(慣れない方には暗すぎるので日の出30分前からの行動をおすすめします)
歩く速度も速いです。
歩き出しは暗いのもあるのでゆっくりめ、
七ツ石小屋から先はかなり早くなります。
平均してコースタイムの70%くらいですね。
トレランではなく、歩いていらっしゃってこのペースです。
歩き続けるわけではなく、休憩をしっかりとっていらっしゃいます。
そして下山完了も早いです。
これだけ余裕があればつい出発を遅くしてしまいそうですが、
そうはされず、ずっと「登山は早出早着」を守っていらっしゃいます。
これだけの技量と、山に対する敬意、畏怖、奉仕のお気持ちを
継続して持っていらっしゃるのは本当にすごいなぁ……
と我々小屋番は、いつも身が引き締まる思いです。
さぁ、あなた自身は「雲取山日帰りピストン(鴨沢ルート)」に
挑戦する資格があるかどうか、考えてみてください。
さらに最後にダメ押しで小屋番の本音をざっくりと言っておきますね。
「秋冬に、初めて雲取山日帰りやるの?
やめときなよ〜。初めては来年の新緑の季節からにしときな〜。」